寺本鉄工からのお知らせNews

2024.06.25
モノづくり日記

次世代半導体からゴミステーションまで

 こんにちは、社長の寺本です。

 「次世代半導体からゴミステーションまで」。「宇宙ステーションまで」じゃないですよ、タイトルはあたっています。その話をしたいと思います。

 当社は、EV自動車、5G、次世代半導体といった最先端の分野で使われる産業機械の設計製作を通じて、お客さまの理想的なモノづくりを支え、より便利な社会の実現へと貢献する一流のモノづくり会社です。

 そして当社がより高精度、高精密で且つ、機能的で故障しにくく、メンテナンスしやすく作る事、そしてその価格をできるだけ安く抑えて作る事によって、世界中の車やスマホやPCなどが一般の消費者に安く提供できるんだという存在価値(パーパス)を持った会社です。

 そのような世界に貢献する会社に(ちょっと大げさですが)、先日、1本の電話が入りました。「近くの町内の町内会長をしている〇〇と申しますが、実は町内のゴミステーションの扉が錆びて壊れかけているのですが、そちらで修理できませんか?」当社は社名に鉄工とついているので、まさか精密な機械を作っているとは想像もできなかったのだと思います。そして続けて言われたのが「2~3軒、電話したのですが、どこにも断られまして・・・」、そうですよね、ゴミステーションを丸ごと作り直すのであれば、引き受けてくれる鉄工所もあると思いますが、修理だけだとすると、正直とても面倒くさい話です。

 んー、迷いました。おかげさまで会社はとても忙しいです。もちろん私も言うまでもなくそんなことに付き合う時間なんてありません。でもね、すごく困っているのがわかるんですよね。私も自宅のトイレが壊れた時に、どこに電話していいのかわからなかったです。トイレまるごと交換するならまだしも、「修理してもらえませんか」なんて言いづらかったのをすごく覚えています。「ここでうちが断るとこの町内会長さん、すごく困るんだろうな」なんて考えたら、「とりあえず、今から見に行きますよ」って言っちゃいました(笑)。

 すぐ近くなので、5分もかからず行くと、女性の町内会長さんが待っていてくれました。「ここなんですよ~、ここが錆びてきたために、扉が途中までしか開かなくなってしまいまして・・・、町内の方からはなんとかしてくれと何件も電話があって・・・、ほんと助かりました。」

 見た後に断わるつもりはなかったのですが、さてどうやって直そうかと考えました。扉のレールが錆びているので、それを交換すればいいのですが、そのレールは、がっつり溶接がしてあるので、問題はそれを剥がすことができるのかと、この場所に溶接器を運んできて溶接できるのかということです。その場で真っ先に当社の板金溶接関係を協力していただいている会社の社長に電話して内容を伝えました。「寺本社長の頼みならいいよ」って言ってくれましたが、声の裏には気のせいかもしれませんが「面倒くさい」って聞こえてきそうでした。

 会社に戻ってから、もう一度考えました。たいしたお金も貰えそうにないので、うちの協力企業さんも含め、みんな面倒くさいですよね。そう思ったし、もともと自分が受けた話だから、自分1人でやることにしました。若い頃に現場は嫌というほど経験していますので、このくらいは1人で修理する自信はあったのですが、さすがに精密機械を製造する当社には溶接器がないので、それ相当のネジ止めで対応することにしました。

 自分で部品図を描き、発注して10日後くらいに部品がそろったので、1人で作業を始めました。ちょうどその日はゴミの日でもあったので、ゴミステーションに来た15人くらいの方々から「よかったわ~、もう最近、扉が開かなくて困っていたんや~」「本当、ありがたいです」みたいなお礼を皆さんから言われました。もちろん修理完了した時は、町内会長さんからもとても感謝されました。最初お願いしようとしていた協力企業の社長さんからは「今や世界を相手にしている(ちょっと大げさですが)会社の社長が、ゴミステーションを直すなんて・・・」と、腹をかかえて笑われました。

 修理代をいくらもらうか、これも迷いました。世界を相手にしている会社なので(笑)、10万円くらい請求したいところですが、もともと私1人でやって、社員にも手伝ってもらわなかったので、材料費だけ(それでもステンレスなので19,000円)その町内に請求させていただきました。(無料でもよかったのですが、逆に困ると思いまして)

 寺本鉄工は、次世代半導体の機械も作りますが、ゴミステーションも直します。が、これを読まれた方、なるべく電話しないでくださいね。そんな暇じゃないんです。(笑)